いつも当店をご利用いただき、誠にありがとうございます。
スタッフの伊藤です。
早いもので、今年ももう年末。
街はすっかりクリスマスの装いですが、皆さまはいかがお過ごしでしょうか。
日本におけるクリスマスのあり方は、あらためて考えてみると、なかなか興味深いものがあります。
本来はキリスト教の宗教行事であるはずのものが、この国では宗教性を大きく後退させたかたちで定着し、今では季節の行事として広く共有されています。
日本の結婚式と聞くと、無宗教、あるいは仏教徒であっても、神父の前で誓いを立てる光景を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。
外部から流入した文化や制度を、原型のまま受け取るのではなく、自らの社会や生活に即したかたちへと再編成していく。
そして結果として、それが人々の暮らしの中に深く根付いていく。
日本におけるクリスマスは、その典型例のひとつと言えそうです。
この現象を、西洋文化やグローバル資本主義による一方的な侵食として捉えることも可能ですし、
実際そうした側面があることも否定できません。
しかし同時に、そこには確かに人々の生活があり、感情があり、「日本なりのクリスマス」が形成されてきたという事実があります。
和服の起源を辿れば、呉、すなわち中国に行き着きます。
戦後に流入したUS古着もまた、敗戦という大きな挫折を抱えながら、日本独自の文脈の中でカウンター性を持つものとして再解釈されてきました。
異国の文化やモノを取り込み、自分たちの形へと作り変えていく。
そうした柔軟さこそが、日本文化の本質のひとつなのかもしれません。
こうしたことを踏まえたうえで、本日ご紹介するのはこちら。


ダッフルコートです。
イギリス海軍が由来のヘビーアウター。
トレンチコートや一般的なウールコートに比べると、どこか緊張感がなく、日常に落とし込みやすい点が特徴と言えます。
トグルやフードなど、視覚的な記号性の強さもこの独特なポップさに繋がっていますね。
そんなダッフルコートのルーツを辿ると、起源はトルコの民族衣装にあるとされ、そこから北欧の漁師を経て、イギリス海軍へと伝わっていったという説があるそうです。
日本においては、戦後以降の西洋文化の流入の中で学生服や日常着と結びつく形で定着してきました。
トレンチコートのように制度や権威を象徴する外套としてではなく、実用性を基盤とした若者の衣服として受け入れられた点が特徴です。
こうした背景からダッフルコートは、日本国内においてミリタリーウェアとしての雄々しいイメージと、どこかアンニュイな柔らかいイメージを同時に内包しています。
大元がミリタリーウェアでありながらもこうした両義性が成立するのも、文化を受容し、それを独自に発展させていく性質あってのものなのではないでしょうか。
こうした文化的な受容のあり方は、衣服を個人が選び取る場面にも、そのまま当てはまるように思います。
もちろん大前提として、装いは個々人の嗜好に委ねられるものです。
ただ、ある種のコスチュームとしてではなく、同時代性を引き受けたファッションとして選ばれる衣服には、確かな説得力が宿るように感じられます。
衣服は、自己を言葉の代わりに表象する媒体でもあります。
他者のまなざしを前提とする以上、ファッションは本質的に社会的な営みであり、そこから完全に独立、自閉した状態でいることはできません。
だからこそ、自己を最も自然なかたちで代弁してくれる衣服を探すという行為には、一定の必然が伴うのだと思います。
少し個人的な話になりますが、私自身、ダッフルコートを愛好しています。
ミリタリーウェア由来のいかつさを持ちながら、どこか力の抜けた佇まいも併せ持つその性質が、自分の中にあるナーディさやラフさといった要素を、過不足なく映し出してくれるように感じるからです。
気負いすぎず、かといって無頓着でもない、そうした中間的な自己像を、そのまま身体に預けられる点に、ダッフルコートの居心地の良さがあります。
このように、ある衣服が自然と身体や感覚に馴染むという経験は、単なる好み以上の意味をもちうると思います。
それは、その人が生きている時代や社会の空気と自己像とが、無理なく重なり合っている状態とも言えるでしょうか。
過去の様式をなぞることでも、記号的な装いに寄せることでもなく、同時代性を引き受けたファッションとして選ばれる衣服には、そうした静かな説得力が宿ります。
自分の存在を支えてくれるような衣服を探すことは、想像以上に面白いことで、その答えが実はダッフルコートだったという人も、決して少なくないはずです。
古い言葉遣いや文体を参照し、尊重しつつも、自分の感覚で読み直し、書き直すこと。
長い文化的歴史を背負った装いを、そのまま再生産するのではなく、いまの生活や自己の身体感覚の中でどう成立させるかを考える。
こうした、言わば翻訳の過程を経て、衣服は「いまの自分のもの」になるのだと思います。
つい熱が入ってしまいましたが、それでは個別の紹介に移らせていただきます。



OLD
ROYAL NAVY
DUFFLE COAT
MADE IN ENGLAND
SIZE 36
イギリス軍のダッフルコート。
こちらはフード裏のスナップボタンが省略された1953パターンの個体です。
実物特有のガサガサした極厚ウールメルトン生地は他では味わえません。
軍実物のダッフルはサイズが大きすぎてガンダムみたいになってしまうものも多々あるのですが、こちらは表記36と嬉しい小さめサイズ。

首元に二連ボタン留めのチンストラップが付きます。

もちろんつけずに垂らしても。

フードは小さめのものがつきます。
厚みがあるので収まりのいいシルエット。

袖はボタン止めのストラップ付き。

大きいパッチポケットで

裏側の補強もばっちりです。

トグルボタンは木製でループはガサッとしたジュート。
細かいところですがイギリス軍タイプのトグルボタンは縦に付く特徴があります。

こちらも裏側に補強が。大雑把ですが大切なところは外していないつくりです。

所々、生地が削れて織地が見えるようになっています。
コットンやリネンと比べると評価されていませんが、ウールの経年変化もかっこいいと思います。
それではスタイリングへ。
JACKET…OLD TWEED JACKET
PANTS…Levi's 550 BLACK DENIM PANTS
SHOES…OLD Heinrich Dinkelacker WING-TIP SHOES
MUFFLER…OLD St.Michael WOOL MUFFLER
ツイードに太めのブラックデニムで合わせました。初詣コーデ的な感じです。
ツイードの中はシャツでもハイネックのセーターでも。
コート自体が大きいつくりなので、下もそれなりに太いものを履いたほうがバランス取りやすいと思います。
重たくてガサガサして野暮ったいんですが、そこに愛嬌を感じる一着です。是非。
続いてはこちら。




OLD
GLOVERALL
CORDUROY
DUFFLE COAT
MADE IN ENGLAND
SIZE UK44
名門グローバーオールメイドのコーデュロイダッフルコート。

まず目につくのは肉厚で太畝のコーデュロイ生地。
ここに裏側ボアまでつくので、下手なウールものより暖かいかもしれません。

両側ボタン留めのチンストラップ。
高さや厚みもないので取り回しやすい部類です。

こちらも垂らしてもかっこいいですね。

フード裏にはフードの大きさを変えられるギミックが。
原付乗る時とか案外ちょうどいいのかもしれません。

袖までトグルボタンの贅沢な仕様です。

肉厚なフラップ付きのポケット。

レザーループに水牛トグルボタン。
グローバーオールの作りの良さを象徴するような箇所です。

ボタン裏はコーズ生地+パイピングの補強。

フロント裏側にジッパー付きです。
より風を防いでくれる機能的なディテール。

嬉しいダブルジップです。
あまり使うことはないかもしれませんが、
あって困るものでもありません。
それではスタイリング。

KNIT…OLD Endacott Woollens GUERNSEY SWEATER
PANTS…1961 BRITISH ARMY GREEN TROUSERS
SHOES…OLD Church's GRAFTON
全身イギリスで揃えてみました。
裏地ボアなので、インナーはニットぐらいがちょうどいいと思います。
コーデュロイのダッフル、冬の記号を背負い切ったような一着です。冬がお好きな方是非。
最後はこちら。



OLD
GLOVERALL
DUFFLE COAT
MADE IN ENGLAND
SIZE 36
こちらもグローバーオールのダッフル。
たまに見る襟付きの個体です。

襟があるだけで首周りの印象もガラッと変わります。

フードもつくので首周りはなかなか迫力ありますね。

こちらは袖が詰められています。
ダッフル特有の袖の長さがお好みでないお客様におすすめできます。

こちらも肉厚なフラップポケット。

レザーループに水牛トグルです。

裏地は起毛感ある暖かいウール地。
ボタンの補強や丁寧なパイピングなど、見えないところにつくりのよさを感じます。
サイズ小さめなので小柄な方におすすめです。
普通のダッフルはちょっとカジュアルに寄りすぎるなあという方も是非。
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短いですが本日はこのぐらいで。
一年の終わりが近づき、街も人の気配も何となく慌ただしくなるこの時期。
装いを通して、少しだけ自分の立ち位置や時間の流れを意識してみるのも悪くないかもしれません。
本日ご紹介したダッフルコートが、皆さまにとってそんな一着になることを願っています。
それでは、明日も皆様のご来店お待ちしております。メリークリスマス🎄🎅🍗🧌