いつも当店をご利用いただき、誠にありがとうございます。
スタッフの伊藤です。
本日は、ヨーロッパミリタリーの中でも定番中の定番、王道のパンツをご紹介いたします。


FRENCH MILITARY
M-47
CARGO PANTS

前期タイプから

空軍モデル、

そして後期モデルまで。
幅広い年代、サイズ、生地の個体を豊富に取り揃えております。
同じモデルでありながら、ここまで多様なバリエーションを持つアイテムは、古着全体で見てもそう多くはありません。
例えば同じ前期型でもフラップの形状や生地の色味、細部の縫製にかなりの差があり、後期型でもそれは同様。
生産された工場ごとに無数のバリエーションが存在します。
近代的な大量生産体制へと移行しつつも、まだ生産手段が完全に画一化されていなかった時代。
その狭間で生まれた、当時の人々の生を感じさせるような揺らぎのあるものづくりには、どこか惹かれるものがあります。
均質化された都市、モノ、サービスに囲まれて日々を過ごす現代において、差異や個性、人の温度を求めて古着に魅せられていくのも、ある意味で必然と言えるかもしれません。
そしてもう一つ見逃せないのは、これがもともと単なるミリタリーウェア、国家の暴力装置の道具だったという事実です。
M-47は、フランス植民地であるアルジェリアやインドシナの独立を阻止するため、派兵された兵士たちに支給されていたパンツでした。



こうしたミリタリーウェアやデニム、モールスキンといった古着文化の王道アイテムは、本来戦争や労働といった、オシャレとは無縁の生の現場のために作られた実用品です。
それが時代と国境を越えてファッションアイテムとして再定義され、評価されている。
この価値の転倒、そしてそこに宿るカウンター性こそが、日本の古着文化がハイメゾンと並ぶ独自の文化圏にまで成長した最大の要因と感じます。
時代の息遣いを感じさせる造形的な多様性と、価値の転倒が引き起こしたファッション性。
この二軸を併せ持つ象徴的な存在として、M-47はまさに古着の魅力そのものを体現したアイテムだと思います。
定番アイテムなのも頷けますね。
少し長くなりましたが、ディテールの紹介へ。
恐らく皆様ご存知だと思うので、手短に済ませていただきます。
まずは前期から。


M-47
CARGO PANTS
EARLY TYPE
厚手のツイル地にストレートシルエット。

サイズ、年代表記は円形のスタンプ。40年代ごろのフレンチミリタリーでよく見かけるものです。


こちらの個体は最初期三つボタン、ウッドボタンのモデルです。
両玉縁の腰ポケットに、
マチ付き大容量カーゴポケット。
最初期はフラップとボタン留めが山型で、一体化しています。
ダブルニーに
裾のストラップ。
丸みのあるヒップポケットのフラップで
こちらもボタン留めがフラップと一体化しています。
続いては空軍モデル。


M-47
CARGO PANTS
AIR FORCE TYPE
後期型のテーパードシルエットながらツイル生地。
東欧ミリタリーらしさも感じさせる濃いダークオリーブカラーが特徴です。

サイズ、年代表記は白い長方形状のタグ。

フロントはむき出し一つボタンの後期仕様。
腰ポケットは変わらずの両玉縁。
カーゴポケット。フラップとボタン留めは分離した後期のパターンです。

ダブルニーに
裾のストラップ。
ヒップポケット。こちらも前述のとおりです。
最後は後期です。


M-47
CARGO PANTS
LATE TYPE
テーパードのかかったシルエットにHBT生地。

サイズ表記はお馴染みの数字二桁。10の位がレングスで1の位がウエストです。
むき出しの一つボタンで、
こちらも両玉縁の腰ポケット。
カーゴポケットに
ダブルニー、
ストラップに

ヒップポケット。
ざっと見ただけでも、多様な仕様が存在することがわかります。
そんな中でも共通するのは厚手の生地感とポケット周りの丁寧なつくりや縫製、ダブルニーに裾のストラップ。
無骨でありながら理にかなったディテールの積み重ねが、いま見るとかえってデザインとしての完成度を感じさせます。
合理性を突き詰めた果ての機能美という側面で、ヨーロッパミリタリーの中でも群を抜いて完成された一本と言えるのではないでしょうか。
また、現在店頭には在庫がございませんが、ほかにも平織りの個体などもあり、まさにM-47の幅広さを感じます。
それではこちらの三つのモデルで、それぞれ一つずつスタイリングをご紹介します。
まずは前期から。

JACKET…OLD Levi's BOA JUCKET
SHIRT…OLD CLUB WOOL OPEN-COLLAR SHIRT
SHOES…1952 BRITISH MILITARY LEATHER BOOTS
イタリアリーバイスのフライトジャケットにフレンチのウールネル、イギリス軍のレザーブーツを合わせたユーロアメリカンカジュアルスタイル。
前期の無骨で雄々しいニュアンスは、アメカジテイストでも上手く調和してくれます。
続いては空軍モデル。

JACKET…40's BLACK COTTON WORK JACKET
SHIRT…〜60's ROYAL AIR FORCE COLLARLESS SHIRT
SCARF…OLD TOOTAL SCARF
SHOES…OLD Heinrich Dinkelacker WING-TIP SHOES
ジャーマンワークにイギリス軍のカラーレスシャツ、足元はディンケで。少し物足りない首元はスカーフを巻いて情報量を足しました。
全体的に空軍モデルの暗めのオリーブカラーに沿わせてみました。
前期のスタイリングとうってかわってしっかりユーロカジュアルですが、本領発揮の馴染み方です。
最後に後期モデル。

JACKET… OLD DORMEUIL DOUBLE BREASTED NAVY BLAZER
KNIT…OLD benetton WOOL TURTLE-NECK SWEATER DEAD STOCK
SHOES…OLD CHEANEY LOAFERS BENCH MADE
古いドーメルの紺ブレに発色いいベネトンのタートルネックニット、チーニーのローファーを合わせました。直球ミリタリートラッドです。
後期型は他モデルと比べて上品な印象があり、こうした少し硬めのカジュアル使いにもよく馴染みます。
M-47というパンツは、単なる定番や人気モデルといった枠を超えて、古着という営みそのものの文化的な豊かさを感じさせてくれる存在だと思います。
個体ごとの豊かな個性やアイテムの歴史的背景、日本の古着産業の先達が行ってきた価値の転倒、創出。
どの時代のモデルを選んでも、それぞれに確かな魅力があります。
まだお持ちでない方はもちろん、既に一本お持ちの方でも、ぜひこの機会に手に取っていただきたい名作です。
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今回はこのあたりで。
最後になりましたが、本日オーナーの世田が買付から帰国しました。
今後は新入荷のご案内も増えていくかと思いますので、そちらもぜひお楽しみに。
明日も皆様のご来店を心よりお待ちしております。